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十四世名人木村義雄

食事とおやつについて

その他

食事から八段をのぞく
　名人決定戦は、他の将棋と違つて、なか／＼精力の消耗するものと見え、食ひものゝ選択が作戦の一つになつてゐる。
　昼食抜きは、花田八段と、近頃神田八段がやりはじめた。
　一体、食事から見た、各八段の好物はどんなものだらうか、御披露に及ぼう。
　神田八段は、その体質がものをいつて、「柳川」を常食としてゐる。
　胆汁質組の土居、木村両八段は、「鰻」が大変な好物で、食事の注文は「鰻めし」にきまつてゐつ。
　神経質組の花田、金子両八段は、すつぽんの雑炊を第一に時に長駆お座敷テンプラに出かけることもある。
　金、萩原両八段は、要するに何んでも来いだが、とりたてていふと、洋食弁当である。　
　金子八段は、夏になるとさすが生粋の江戸子だけに、盛に「もり」をつる／＼とやる、その食ひつぷりも洗練されたものである。
　木見八段となると、日本料理一点張り、御機嫌のいゝときは、自ら市場に足を運んで材料を買出し、手料理に及ぶといふ隠し芸をもつてゐる。
　酒は、木見、土居、金子、花田各八段が屈指の豪のもの。
　木村、萩原、神田の各八段は、一杯の酒に真ツ赤になる下戸党である。
(出典：「本社独占名人決定大棋戦譜. 第三輯」33pより)
温泉旅館の想い出
大原正孝

　其の時伊藤氏はこんな物語をされた。
（中略）
　或る日何時もの如く、ある会所で指して見たがまたたくまに勝ってしまった。其の時背後でジッと立って見て居た赤顔の少年があった。縞の着物に木綿の袴と云ったいでたちの少年が、やがて伊藤氏の盤の前に座り「私が対局しましょうか」と云う。
（中略）
二局目も同様に少年の勝に終ってしまった。二局目を終ってから二人は外へ散歩に出た。
「何か食べない？」「僕、寿司好きなんだけど」と云うので近くの寿司屋に入り二人分注文した。氏は食べ終ろうとしても、少年はお茶を飲んだきり一向に寿司を食べようともしない、不審に思った氏は少年に尋ねた。
「君が好きだと云うので注文したんだが、なぜ食べないの？」
「これお母さんに頂いて行けないか知ら、お母さんお寿司大好きなんです」
「お母さんへ持って行くなら、別に注文するから、此れを食べなさい」
　幾度も進められ、それではと云うので初めて少年は食べ初めた。其れから間もなく伊藤氏と少年は寿司屋の店先を出た。むろん少年は片手にお母さんの大好きな寿司の折箱をお土産に持って居た。別れに際して「私、木村義雄と申します。宜敷くお願い致します」初めて名乗った。
（中略）
　当時僅か十銭の好きな寿司を食べようともせず、お母さんへ持って行くと云うこの孝心、なんと云う立派な少年であろう。
(出典：将棋世界1963年9月号より)
--- 私は、将棋と食い道楽を生き甲斐にしてきた男です。
好きなものを食べられないのが残念でね、今一度元気になり、将棋をもう一度ゆっくり指し、腹一杯食べてみせます。
この頃いろいろと欲がでてきてね、アハハ……
---
註・前年脳血栓で倒れて、一年のリハビリを経ての久々のインタビューの時に
(出典：将棋世界39(8)より)
---
　父は健啖かつ食い道楽だった。
私とは三十歳ほどの年齢差があるのだが、私が食べ盛りの頃にも同量は食べていただろう。
幼年期の思い出だが、茶碗を二つ用いたことがある。
自然薯のトロロが好きで、飲みこんでしまうために、交代の茶碗が必要というわけである。
　飲みこむのはソバについても「ソバは耳食といってかまないものだ」と言っていた。
ソバは私も好きだが、二三回かんだほうがソバの味がよくなる（あたり前）。
「少しはかんだほうがいいでしょう」と言ったら、「お前は素人だ」。
　父は健康だったに違いない。明治の庶民では病弱者は生きのびられなかったろう。
アルコール類に弱くもあり、食い道楽に集中していたようだ。
（中略）
　食い道楽は祖父ゆずりで、二人から安くておいしい食べ物の話をよく聞いている。
（中略）
　父の場合は、気に入った料亭でエビのテンプラばかり三十尾ぐらい。往復はタクシー。
これでは糖尿病になるにきまっている。
最後の入院中に、「オレは糖尿病でやられた。お前も気をつけろ」と言ったのが遺言のようになっている。
---
(出典：「ある勝負師の生涯将棋一代」木村義雄文春文庫 1990 p.298,299 「父の思い出」木村義徳より適宜改行を施した)
609 名無し名人 (ｶﾞﾗﾌﾟｰ KKe5-gemm)[sage]：2016/12/15(木) 10:33:30.82 ID:oguSeHX8K
例えば囲碁界で食事ネタが話題にならないのに将棋界で話題になるのは、「伝統だから」としか言いようがない
将棋世界の創刊号にも「スヰカも辞せず」という金八段の食事ネタがある程だし

第1期名人決定特別リーグの観戦記で食事の記述があったり、花田八段の天龍寺の自戦記でさえも食事の言及があったりする
だから名人戦（順位戦）の歴史はそのまま食事ネタの歴史でもある

当時の黄金カード木村花田戦で、食事は主催者持ちで木村八段が鰻頼んでるのに花田八段が林檎しか取らず
---
倉島君は天丼を掻込みながら「花田さんのように胃腸の弱い人は気の毒だな」といった。
--- 昭和11年8月5,6日　第1期名人決定特別リーグ　木村八段vs花田八段　観戦記者は菊地寛

という描写は、木村・花田・倉島３氏のそれぞれの雰囲気がよく伝わるけだし名文
(典拠：食事・おやつ総合ｽﾚ観戦記者からﾊﾝﾊﾞｰｸﾞ強奪71個目 [無断転載禁止]©2ch.netの609)
木村十四世名人の鰻重

昨日は加藤一二三九段の鰻重の話だったが、
今日は木村義雄十四世名人の鰻重の食べ方の話。

将棋ペンクラブ会報2003年秋号、河口俊彦七段の将棋ペンクラブ大賞
（大山康晴の晩節）受賞のことば「天才の将棋的言語」より抜粋。

＝＝＝

生前の芹沢博文は、いたく木村義雄名人を尊敬していて、
いろいろなゴシップを聞かせてくれた。お得意にしていたのはこんな話だ。

「木村名人は昼飯のとき、赤坂の料亭で極上のうな重の出前をとる。
それが運ばれると、ふたを取って茶をかけ、またふたをする。
しばらく置いてふたを取り、うなぎを取り去る。
そして香の物をおかずに、サラサラとかっこむ。
うなぎをもったいないなんてケチッちゃいけない。
ポイと捨てるところが、どうだ、しゃれてるだろ」

この話ははじめて書く。出し惜しみしていたわけではない。
あまりにくだらないと思って書かなかったのだ。

芹沢は、「木村義雄論」を書くと言っていたがはたせなかったが、
もし書き上げたとしても、さっきの話は書かなかっただろう。

しかし、芹沢も私も、ああいった話が好きなのである。

木村義雄という人間の一面があらわれていると思う。

（以下略）

＝＝＝

ひつまぶしの鰻抜きのような食べ方だ。

それにしても、くだらない話とは思わないが、
私には一生かかっても真似ができないことだと思う。

ハムカツサンドのハムカツ抜きならば、別の美味しさが味わえそう
で試してみてもいいかなと思うが、カツ丼のカツ抜き、
ハンバーガーのハンバーグ抜きあたりからは試そうという気も起きなくなる。

木村十四世名人の鰻重の食べ方は、江戸っ子の粋の究極の表現なのか、
木村十四世名人のある種の屈折の部分なのか、盤外戦術なのか。

興味深いところではある。
(出典：木村十四世名人の鰻重 [将棋ペンクラブログ])(適宜改行を施した)

タイトル戦

年度

期

棋戦

氏名

段位

勝

敗

1952

名人戦

木村義雄

名人

東京都渋谷区
「初波奈」
(1952/05/19月-05/20火)

大阪市帝塚山
「鉢の木」
(1952/06/02月-06/03火)

名古屋県名古屋市八事
「八勝館」
(1952/06/16月-06/17火)

東京都渋谷区
「初波奈」
(1952/06/30月-07/01火)

大阪府泉北郡高石町
「羽衣荘」
(1952/07/14月-07/15火)

名人失冠

○大山
午前：
昼食：
午後：駒型の饅頭

●大山
午前：
昼食：
午後：

午前：
昼食：
午後：
夕食：

1952

名人戦

木村義雄

名人

東京都港区
「泉岳」
(1951/03/19-03/20)

東京都港区
「般若苑」
(1951/04/04-04/05)

兵庫県宝塚
「松楓閣」
(1951/04/18-04/19)

大阪府大阪市東住吉区
「たち花」
(1951/05/02-05/03)

東京都渋谷区
「羽沢ガーデン」
(1951/05/14-05/15)

東京都渋谷区
「初波奈」
(1951/05/28-05/29)

名人防衛
3期連続通算8期

○升田
午前：
昼食：
午後：

●升田
午前：
昼食：
午後：

○升田
朝食：スープ野菜パンミルク
午前：
昼食：ほうれん草ひたし野菜サラダ

午後：
夕食：つきだし刺身吸物焼物

○升田
午前：
昼食：
午後：

●升田
午前：
昼食：
午後：

○升田
午前：
昼食：
午後：

午前：
昼食：
午後：
夕食：

1950

名人戦

木村義雄

名人

静岡県熱海市
「八方苑」
(1950/03/20月-03/21火祝)

名古屋県名古屋市八事
「八勝館」
(1950/04/04火-04/05水)

京都府京都市
「田中博氏邸」
(1950/04/17月-04/18火)

福岡県福岡市
「みどり荘」
(1950/05/01月-05/02火)

東京都文京区
「もみぢ旅館」
(1950/05/29金-05/30土)

兵庫県宝塚市
「松楓閣」
(1950/06/12月-06/13火)

名人防衛
2期連続通算7期

○大山
午前：
昼食：
午後：コーヒー生菓子

○大山
午前：
昼食：
午後：

●大山
午前：
昼食：
午後：コーヒー

●大山
午前：
昼食：
午後：

○大山
午前：
昼食：うなぎ丼
午後：

○大山
午前：
昼食：
午後：

午前：フルーツ盛り合わせ

昼食：パン牛乳

午後：
夕食：

午前：
昼食：
午後：
夕食：

午前：
昼食：天丼

午後：
夕食：

午前：
昼食：
午後：
夕食：

1949

名人戦

木村義雄

前名人

神奈川県湯河原町
湯河原温泉「中西旅館」
(1949/03/29)

愛知県豊川市
「豊川稲荷」
(1949/04/08)

和歌山県和歌山市
和歌の浦「不老館」
(1949/04/20)

神奈川県湯河原町
湯河原温泉「中西旅館」
(1949/05/11)

東京都千代田区
皇居内「済寧館」
(1949/05/24)

名人復位
通算6期

●塚田
昼食：
午後：隠元の鹿の子とようかん
夕食：

○塚田
昼食：
午後：
夕食：

●塚田
昼食：
午後：
夕食：

○塚田
昼食：
午後：
夕食：

1940

名人戦

木村義雄

名人

東京府麹町一番町
「将棋大成会」
(1940/04/28日,05/01水-05/03金)

兵庫
「宝塚松涼庵」
(1940/05/11土-05/13月)

福岡県筑前武蔵温泉
「延寿館」
(1940/05/21火-05/22木)

東京府麹町一番町
「将棋大成会」
(1940/06/03月-06/04火)

北海道定山渓温泉
「定山園ホテル」
(1940/06/25火-06/27木)

東京府麹町一番町
「将棋大成会」
(1940/07/11木-07/13土)

東京府麹町一番町
「将棋大成会」
(1940/07/23火-07-25木)

名人防衛
2期連続通算2期

○土居
午前：
昼食：蕎麦
午後：
夕食：

○土居
午前：
昼食：
午後：
夕食：

千日手土居
午前：
昼食：
午後：
夕食：

●土居
午前：
昼食：
午後：
夕食：

○土居
午前：
昼食：うどん
午後：
夕食：うどん

○土居
午前：
昼食：
午後：
夕食：

午前：
昼食：
午後：
夕食：

午前：
昼食：
午後：
夕食：饂飩に野菜の天ぷらを追加

午前：
昼食：
午後：
夕食：

午前：
昼食：
午後：
夕食：
夜食：

午前：
昼食：
午後：
夕食：鮎の塩焼き等
夜食：幕の内

千日手

午前：
昼食：笊蕎麦二つ
午後：茶菓子
夕食：石狩鍋
夜食：林檎

午前：
昼食：
午後：
夕食：
夜食：

特別棋戦

年度

棋戦

氏名

段位

勝

敗

1946

木村-升田五番将棋

木村義雄

名人

兵庫県宝塚市
「さくら旅館別館」
(1946/09/17火-09/18水)

兵庫県宝塚市
「宝楽」
(1946/09/20金-09/21土)

奈良県奈良市
「むさしの別館特別室」
(1946/12/06金-12/07土)

敗戦

●升田
午前：
昼食：
午後：

午前：
昼食：
午後：
夕食：

午前：
昼食：パン玉子
午後：
夕食：

午前：
昼食：
午後：
夕食：※休憩なしで指し継ぐ

年度

棋戦

対局場

氏名

段位

1日目

2日目

3日目

4日目

5日目

6日目

7日目

1937

坂田木村大棋戦

南禅寺

木村義雄

八段

○坂田
午前：生みたての卵
昼食：
午後：

午前：生みたての卵
昼食：
午後：

勝利

トーナメント戦

年度	期	棋戦		氏名	段位			勝	敗
1948	08	名人戦	挑戦者決定戦第3次戦	木村義雄	前名人	○松田辰昼食：午後：お茶最中夕食：	○松田辰昼食：午後：夕食：	2	0	名人挑戦
1939		関西社交クラブ連合大会	席上対局	木村義雄	名人	●升田おやつ：コーヒー

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